第12章 Ave Maris Stella
真夜中。
智が魘され始めた。
…一緒に寝るようになってからは、その回数は減った。
だから、俺と一緒に寝ることで智がご家族のこと忘れるならと思って、この腕枕も許容してたけど…
それでもまだ智は魘されることがある。
「…智…」
真冬だというのに、呼吸も乱れて汗をかいて…
「う…うう…」
見えない家族に手でも伸ばしているのか、空に向かって手を伸ばす。
「大丈夫だよ…智…」
「……」
ベッドを抜け出すと、洗面所からタオルを取ってきた。
苦悶に満ちた表情の智の額の汗を拭うと、またベッドに入って空を彷徨っていた手を握った。
「あっ…あああっ…」
それでも、智の悪夢は終わらないようだった。
「嫌だっ…嫌だっ…こっちに来るなっ…」
「智…大丈夫…」
飛び起きそうになる智の体を、ぎゅっと抱きしめた。
子供にするように、背中をポンポンと叩く。
「大丈夫…大丈夫…」
「うう…」
汗を拭きながら、しばらくそうやって智を抱きしめていると、だんだんと呼吸も緩やかになってくる。
「大丈夫…大丈夫だよ…智…」
やがてそれが健やかな寝息に変わる。
ここまで来て、やっとホッとできる。
酷い時は明け方まで魘されていることもある。
今日はこのくらいで済んでよかった。
「…おやすみ、智…」