第11章 What a Friend We Have in Jesus
「俺は、翔が一方的だって言うからそうじゃないって伝えたかっただけだ…」
「でも…」
「前とは違う」
「え…?」
「今の状況は…前とは違う…」
心臓がバクバク言ってる。
こんなこと初めてだった。
同時に伝わらなくてもどかしい。
こんなに苛ついたこともなかったのに。
あの事件のこと以外では…
「翔が言う…見えない俺の過去ってやつ」
「うん…」
「その頃の俺と、今の俺は違うだろ?もう俺は逃げ回ってる生活はしてない」
「そうだけど…」
「…この腹の傷だって…治す宛はある」
「智…!」
翔は怒った顔をして、俺に枕を投げつけてきた。
「やめろって!」
「だってっ…」
「聞けって!だから俺は頼るところはあるし、明日にでもここを出ていくことだってできる」
俺には雅紀や和也とか…仲間が居る。
住む家だって何箇所かあるし、この傷だって雅紀の息のかかった病院があるから治療することだってできる。
だから…
あんな身体を売るような真似をしてた頃とは、違う。
「だからあのとき、俺がしなきゃ生きていけなかったことを、今する必要はどこにもない」
「智…」
「俺がしたいから、おまえにキスした。それじゃだめなのか?」