第11章 What a Friend We Have in Jesus
やがてその綺麗な目から、涙が一粒溢れた。
その途端、翔は両手で顔を覆ってしまった。
「ああ…そうだよ…俺はゲイだ…」
「翔…」
「生まれたときから、男が好きなんだっ…」
そんなこと、わかってたのに。
そんなこと、なんとも思ってないのに。
「許して…智…」
それを利用しようとした俺が、何を許すと言うんだ。
「俺は、智のこと…」
ぐっと唇を噛みしめると、顔を手で覆ったまま上を向いた。
「…雅紀さんと一緒に居た若い男が俺の弟を誘拐して…」
「えっ…!?」
若い男って…和也のことか…?
なんで…?どうして、翔の前に現れたんだ。
「弟は無事に帰ってきた…智を無事に取り返すための脅しだってわかってる…でもっ…俺はっ…」
そう叫ぶと、両手を外して俺を見た。
手で覆われていた顔は涙に塗れていた。
「脅しだってわかった途端…まだ智と一緒に居られるって…弟が誘拐されかけたのに…俺、そう思ってしまった」
「翔…」
「俺…智にゲイだって言わなかったし、酷いやつだって…」
涙で声が詰まった。
思わず翔を抱き寄せた。
何も考えず、抱きしめた。
腕の中で、翔は小さく震えている。
「智の傍にいる資格…ないと思った…」
「そんなことない!なんでそんなこと…」
「だって俺…こんな酷いこと思って…」