第10章 Jeremiah8:4
パーティーも予定していた終了の時間が近づいた。
予定していた余興はいくつか中止したが、それでも例年と同じような盛り上がりを見せて最後の挨拶まで来た。
挨拶は叔父が代わりにやるということで、混乱はなかった。
やっとこれで帰れると思って、少しネクタイを緩めて会場の隅で休んでいると、部屋に行ったはずの妹が血相を変えて来た。
「兄さん!どうしようっ…」
「舞?どうした?」
尋常じゃない様子に、会場から出て廊下に妹を連れ出した。
「修が…いないの」
「えっ!?」
「友達から電話が来たから、修にはゲームをさせて少しベッドルームで話していて、戻ったら修の姿が消えてたの…」
話している間も、妹は周囲を見渡している。
「ビンゴ大会のことを気にしていたから、部屋を抜け出したんだと思ってこっちに来てみたんだけど居ないの。兄さん、修を見なかった?」
「いや…俺は見てない。GPSは?」
確か見守り用のスマホかなにかを持たせていたはずだ。
「持たせていたスマホは部屋に置いたままなの…だからGPSも使えなくて…どうしようっ…」
「落ち着け。俺も探すから…」
母親や叔父は忙しそうにしていたから、ホテルの人に頼んで一緒に探してもらうことにした。
妹はもう一度客室へ戻って、もしも戻ってきたら俺に連絡をするよう伝えた。
「いいな、舞?」
「うん、わかった…」
泣きそうになりながらも、急いで部屋に戻っていった。