第10章 Jeremiah8:4
また今度こんなことがあったら、雅紀さんやあの若い男になんて説明すればいいかわからない。
智と打ち合わせをしておかないと…「智を回収」されてしまうかもしれない。
「魔法…解けちゃうな…」
思わず呟いてしまったことに気づいて慌てた。
焦って周囲を見渡したけど、誰も俺の近くには居なくて安心した。
「え…?」
俺の近くどころか、人がステージのほうに集まっている。
バタバタとホテルの人が走り回ってて、ステージに登壇していた人が会場に走り込んできてる。
「なに…?」
誰かが担架だと叫んでいる。
病人でも出たか?
ふと、気づいた。
その方向は、雅紀さんとあの若い男が歩いてきた方向だ。
振り返ると、もう雅紀さんとあの男の姿は見えなかった。
危険
危険だ
頭の中で警報が鳴り響いてる。
智を拾った夜みたいに、真っ赤なライトが頭の中で点滅してる。
急いでステージの前まで走ると、人垣をかき分けて進んだ。
「すいません!通してください!」
人垣の向こうでは、スーツを着た人が倒れていた。
見たことがない人だ。
不謹慎だが、ほっとしてしまった。
「早く!担架を!」
倒れている人の周りには、先程まで登壇していた役員や父親がいて、処置に当たっていた。
ワイシャツのボタンを外したり、気道確保をしている。
「翔!」
人垣の中から俺のこと見つけた父親が手招きした。