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Maria ~Requiem【気象系BL】

第10章 Jeremiah8:4


会場の明かりが落ちて、会場の前方にあるステージに父親と母親が現れた。それに続いて病院の役員たちが一団となって登壇してきて舞台後方に並んだ。

めでたい音楽が鳴り響いて、ステージのセンターに置かれたマイクで父親が年頭の挨拶を始めた。

一般の医師看護師その他の職員たちは、仕事始めで病院で働いてる中、役員たちはこんな爺様の頃から恒例行事となっている新年のパーティーに現を抜かしている。

なんとも一般社会と隔絶してる。
やってることが昭和から変わってない。

だから俺が多少薬を盗んだ所で分からないほど、桜井総合病院は遅れている。

ただの町医者が大きくなりすぎたんだ。
経営の才能のあった爺様の代で大きくなりすぎた身代を、持て余しているのが経営の才能のない俺の父親ってわけだ。

医師としては優秀だと思うが、経営の腕はほぼないと言っていい。
そこを親族や古くからの役員に漬け込まれて良いようにされていると俺は感じている。

ウエイターが飲み物を持ってきた。
便宜上20歳とは言っているがまだ後少し未成年ではあるから、アルコールは遠慮してジュースにしておいた。
妹と弟にもジュースが行き渡った。

「それでは…皆様、乾杯のご用意はよろしいでしょうか?」

司会の女性がマイクで確認を取る。

「それでは準備も整ったようなので…本年も益々の桜井総合病院の発展を願って、乾杯!」

乾杯の発声が会場に響いて、この滑稽なショーは一旦終わったようだった。

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