第10章 Jeremiah8:4
会場に入るとこれから新年の挨拶が始まる所で、係員に家族のいる場所に案内された。
妹と弟が俺を見つけ微笑んだ。
一緒にいる母親が俺を見て頷いた。
「あけましておめでとう。兄さん」
「ああ。おめでとう、舞」
「兄ちゃん!なんで正月来なかったんだよ!」
「こら!あけましておめでとうでしょ!」
妹に怒られて、改めて弟から正月の挨拶をされた。
「あ…あけましておめでとうございます。翔兄ちゃん」
去年よりきちんと挨拶することができるようになっていて驚いた。
「あけましておめでとう、修。ちゃんと挨拶できるようになって偉いぞ」
「ほんと?」
「ほんと。ごめんな、修。ゲーム今度一緒にしよう」
「約束だからね!」
「わかったわかった」
笑いながら妹をみたら、満足げな顔をしている。
相変わらず弟の教育係は妹のようで。
「翔、あけましておめでとう」
「おめでとうございます、母さん」
「ごめんね。もう登壇しなきゃいけないの。舞、修を頼むわね」
「はい」
母親はそう言うと、一旦会場の外に出ていった。
「修、お姉ちゃんから離れたらだめだからね?」
「うん、わかった」
両親は忙しいことを理由に、あまり妹弟を構っていないのを感じた。
それでも、俺よりは全然構ってはいるけども。
「寿美子さん、元気?」
「元気元気。寿美子さん寂しがってたよ?」
「ああ…そのうち顔出すよ」
寿美子さんとは、俺が小さい頃からの住み込みのお手伝いさんで。
小さい頃は家にあまりいない両親に代わって、俺の面倒をみてくれていた。
正直、寿美子さんが本当の母親ならいいのになと思ったことはある。
そのくらい、俺には近い存在の人だ。