第10章 Jeremiah8:4
ラウンジを出ると、急いでトイレを探した。
個室に入って封筒の紙束から、さっきのコピーを探した。
「やっぱり…」
智だ。間違いない。
急いで記事を読んだ。
しかしあまり内容のあるものではなく、未成年の殺人ということでスキャンダラスに煽り立てているだけのものだった。
「くそ…」
こんなに早く見つけられて興奮する気持ちと共に、申し訳ない気持ちが湧き出してくる。
コピーの中の智の顔は俺を責めているようにも感じた。
どうすることもできず紙を封筒にしまうと、個室を出た。
先程コートを預けたクロークに封筒を預けると、急いでパーティー会場へ向かう。
冷静になれない。
だけど、なんとか平気な顔を装わないといけない。
今から桜井総合病院の跡取り息子になりきらなきゃならないから。
パーティー会場に着くと、もう開場していた。
人々は受付を済ませパーティー会場に吸い込まれていく。
なんとなく、幼稚舎の時に見学した工場のラインを思い出した。
機械的に自動的に流れていく、大量生産品みたいだった。
それを横目で見ながら、控室に行くともう誰もいなかった。
隅に用意してあったセルフ式の飲み物を見つけて、水を飲んだ。
一気に飲み干すと、いくらか正気に戻った。
ぱしんと頬を両手で叩くと、会場へ向かった。