第10章 Jeremiah8:4
大野 智──
これが智の本名だった。
俺に嘘の名前教えたんじゃなかったの?
本当に智は、智って名前なんだね…
「翔…?」
紙を持つ手が震えている。
「どうしたんだよ?」
下世話な週刊誌。
噂話ばかりでその記事は信用ならないと言われている。
目元は隠してはあるけど、智の顔写真がでかでかと掲載されている記事のコピーだった。
髪型は違うけど、間違いない…
これは智だ。
「翔?」
肩に手を置かれて、驚いた。
「どうしたんだよ?真っ青だぞ?」
「あ…ああ…ちょっと集中しすぎたのか、立ちくらみがして…」
潤にこの事実を言っていいのか、わからないほど頭が真っ白だった。
「大丈夫か?」
潤は俺に手を差し出した。
「ああ…大丈夫だ」
その手を取って起き上がると、潤は散らばった紙と紙束を封筒に戻してくれた。
「はい。本当に大丈夫か?」
「ああ。大丈夫だって…さんきゅ」
封筒を受け取ると、少し落ち着いた。
「じゃあ、気になる記事があったら連絡してくれよ?」
「うん。ありがとうな。ほんと、助かる」
「いいって…お陰で俺も勉強になってるからさ」
「ああ…」
ニコニコ顔の潤に背中を押されて、歩き出した。
「連絡待ってる」
「ああ」