第9章 Romans7:7
「なんだよ。やけに親切だな」
「忙しいのに時間取ってもらったから、当然だろ?」
店員が去ってから誂うと、潤はニッコリ笑った。
今日はスーツ姿でいつもより大人びて見えるのに、笑うと子供のように天真爛漫な顔になる。
「あの後、東京だけなんだけど何件か調べて資料取り寄せてみたんだ」
「え…!?そんなに未成年の放火殺人ってあるの?」
「まあそれに類似した事件ね。本人の主観とは違った事件内容になってる可能性もあるから。あと時間軸も広めに取ってみてる」
そう言うと、隣の椅子に置いていた黒い革のクラッチバッグを手に取った。
中からA4サイズの封筒を出すと、俺の前に置いた。
手に取ると、中には紙がずっしりと入っている。
「なにこれ…PDFにして送ってくれたらいいのに」
「データを提供してくれたとこが、コピーしかダメでさ…」
「ああ、そういうこと」
潤がどこでデータを貰ったのかはわからないが、国立国会図書館のような所だと紙のコピーでしか複写を許してくれなかったりするから、そういう類のところなんだろう。
封筒を開けて中の紙束を取り出した。
「早く見たいかなと思ってさ。午前中に受け取ってきたんだ」
「まじで?わざわざ、ありがとう」
潤の方も、手応えがあったのか。
早く確認してほしくてうずうずしているように見える。
だからこんなとこまで足を運んだんだろう。