第9章 Romans7:7
親戚たちも傍にいたからついでに新年の挨拶をして、一通り終わると父親に耳打ちをした。
「…あの、ちょっと抜けても構わないかな?松本が来てるんだ。開始までには戻るよ」
「ああ…行ってきなさい。こちらは大丈夫だから」
自分の患者の息子ということもあって柔らかに返してくれるが、内心ではあまり面白くないんだろう。
もう家族と俺の中では、俺は病院の跡取りではないけども、周囲は俺が医大生だし長男だから跡取りだと決め込んでる。
だから対外的には、俺は跡取りですって言う約束にはなってるもんだから、一緒に親戚筋に挨拶しないのは父親にとってはあまり都合のいいものではないはず。
「ありがとう。じゃあ行ってくる」
そう言うと鷹揚に頷いてくれた。
母親たちの姿は見えなかったから、まだ衣装に着替えたりヘアメイクをしているんだろう。
今年は元日に家に帰らなかったから、新年の挨拶くらいは済ませたかったが、パーティー中でも大丈夫だろう。
主催者控室を出ると、3階ロビーのラウンジに向かった。
ソファの多いゆったりとした席の取り方をしてあり寛げる雰囲気の店内は、アート作品が飾られていてシックだ。
店員に待ち合わせだと告げると、店内を見回した。
窓際の席に、潤を見つけた。
「悪い。待たせた」
「いや、大丈夫」
そう言うと、潤は店員を呼んでくれた。
「コーヒーでいいか?」
「ああ」