第9章 Romans7:7
パーティー会場のホテルの近くで車を降りた。
運転席の男が睨んで来たけど、それに対してどうリアクションするのが正解なのかわからず、頭だけを下げて挨拶をすると車は乱暴に発進していった。
後部座席の雅紀さんは呆れた顔をしていたが、俺を見ると苦笑いして手を上げた。
それにも頭を下げるだけの挨拶を返して、ホテルまで歩いた。
一体今日、なにがあるというのだろう。
例年通りのパーティーということだけは聞いている。
特別なことなどなさそうだけど…
「翔!」
ホテルのロビーに入ると背後から声が聞こえた。
「潤?どうしたんだよ…」
年末にあったときと同じコートに身を包んだ潤が駆け寄ってきた。
軽く年始の挨拶をすると、すぐに潤は腕時計を見た。
「悪い。ちょっとパーティーの前に時間あるか?」
潤の家は今日の招待客に入っている。
親御さんが父親の患者だからだ。
例年はご両親が出席していて潤が来た試しはなかったから、会場に来ているのに驚いた。
「ああ…ちょっと会場に顔を出してからなら…」
「じゃあラウンジで待ってる」
「わかった」
もしかして年末に頼んだことがもうわかったんだろうか?
そうだとしたら、仕事が早すぎる。
どんな話なのか気になって、会場へ顔を出しに行くのももどかしい。
まだ開場前だから主催者控室に顔を出すと、もう親戚たちでいっぱいだった。
「父さん」
モーニングスーツを着用しソファに座って親戚と歓談している父親を見つけた。
「翔。もう来たのか」
「あけましておめでとうございます」
「ああ。今年も勉強に励んでくれよ」