第1章 始業式
「ホント、趣味悪いよね・・・・・・」
「自分に失礼だな」
「お世辞にもかわいいとはいえないでしょ。ユキちゃんとかトモミちゃんとか、うらやましいわ。器量だってご覧の通り。純粋無垢なあどけなさもないし、処女ですらないのに」
「そりゃ確かに器量は悪いが、鍛えてんだから仕方ないだろう。俺だって溜まったら女抱いてるしな」
「ますます私を好きになる理由がないじゃないか」
ははっと一笑に付した。
私がいくらあしらっても、留三郎は真剣な顔つきを崩さない。
「俺はお前に、女であること以上を求めてるからな。一生を添い遂げるのに、女なら誰でも良いなんて思う訳ないだろう」
「それで、私はそれに応えられているの?」
「まーな。そうじゃなけりゃ、あんなこっぱずかしい思いをしてまで伝えねえよ」
ふーんと言って、私は彼の言葉を咀嚼した。
こんなに思われるほどの人間的な魅力が、私にあるのだろうか。
あると断言してくれている人が目の前にいるのに信じられない。
そうねえ、と答えを引き延ばしていると、障子に伊作の影が映った。
「あのさあ、盛り上がっているところ申し訳ないんだけど。入るよ」
「あ、伊作おかえりー」
「おかえりーじゃないでしょ。なに勝手に男子の部屋に上がり込んでるの」
伊作の母親のような小言を聞き流しつつ留三郎と続きを話そうとする。
「おい、やめろよ。伊作が来たから、中断だ」
「良いじゃん、どうせ伊作も知っているんだから」
「何でバラしてんだよ」
「留三郎、僕が落第ぎりぎりだったという秘密をバラした報いだよ」
留三郎は本日三度目のため息をついた。私はそんな二人を見ながら若干あきれている。