第1章 始業式
「言うわけないでしょ。もう恋はしないって決めたの」
「恋はしないなら付き合う気なんてないじゃねえか。最初から付き合うきがねえなら考えるとか言うなよ」
「留三郎が私に女であることしか求めてなかったら、付き合ってたよ。だってそれは恋じゃないでしょう」
「はあ?何でだ。釈然としないんだが」
そりゃそうだろう。ふつうは逆だ。
「気持ちは分かるよ、普通は逆だからね。でも相手も半端な気持ちで私が好きなんだったら、私も半端な気持ちでつき合えるじゃない」
「だから、俺は半端な思いで言っているわけじゃねえよ。お前も真剣に俺を好きになればいいだけだろう」
「ねえ、それで好きな人って誰」
ああもう、と私は頭を抱えた。
「誰だって良いでしょう」
「良くねえよ」
今度は留三郎にまで詰め寄られる。再びにじり寄ってくる彼を、伊作が手で制した。
「留三郎は良いとして、何で伊作にまでバラさなきゃいけないの」
「委員長特権」
「理不尽だなあ」
別に言ったところで今更どうってことないのだが、なんだか気恥ずかしい。
「本人に言ったらもう口聞かないからね」
「分かってるって」
「言わない言わない。誰も知りたがらないよ」
「知りたがってる二人に言われてもねえ・・・・・・。・・・・・・小平太だよ」
二人はそれはもう見事なくらいにアホ面をしていた。
「・・・・・・はあ?」
「なに?文句がおありで?」
「文句はないけど問題はある」
いち早く正気に戻ったのは留三郎だった。
伊作はまだ呆気にとられている。
「どんな」
「それ、絶対に本人に言うなよ」
「それはこっちのセリフよ」
「伊作も絶対バラすなよ」
「バラさないって。どうしたのさ、留三郎まで」
彼のただならぬ物言いに、さすがに伊作も我に返る。