第5章 𝕆𝕕𝕠𝕟𝕥𝕠𝕘𝕝𝕠𝕤𝕤𝕦𝕞
校舎を出て、毎日くぐっている門を抜けようとしたとき
Boom!!!!!
巨大な爆発音が耳にこだまする
どうやら音の方向は校舎を覆っている林の中からだ
身構えながらも音の方へ足を走らせる
聞き覚えのある爆音にまるで引き寄せられるように
音が近くなり、覗かせる人影に安堵する
『勝己くんっ』
ニコリと笑いかけると「ケッ」とそっぽを向かれる
勝己くんは制服でも体育着でもなく黒のタンクトップに、同じく黒のジャージを身に着けていた。タンクトップから覗かせる逞しい二の腕に、訳がわからず心臓が大きく波打つ
「ンで、まだいんだよ」
『寝っちゃってたの、勝己くんこそなんで』
「幼稚園児か、オレは特訓だわ」
思わず聞き返そうになって、言いかけてやめる
体育祭に向けて自主練してるんだ…
私も明日から三奈ちゃん達と体育館を借りてやる事になっている
勝己くんの頬にはうっすら汗が滲み出ており
布の上からも分かる鍛え上げられた上半身を上下させている
「なんでここにいンだよ」
もう一度投げかけられた問いに首を捻らせる
木々が風に吹かれたまにガサガサと音を立てるだけで、他には何も聞こえない
『だから寝てたから…』
「轟となんかあっただろ」
勝己くんから予想外の名前が出てきて自分でも息を呑んだのが分かった
「…やっぱりかよ、いつも以上に間抜け面してると思ったら呆れンな」
あからさまにため息を吐く勝己くんに、私は体を前のめりにさせる
『ま、間抜け面って…
で、でもそれだけじゃ轟くんにはたどり着かないじゃん!』
「それとはまた別問題だろ」
『別問題って…じゃあなんで轟くんが出てきたの?』
「あ?お前が轟を好きだからだろうがッ」
勝己くんは乱暴に吐き捨てるように言い放つ
私が轟くんを、好き?
別に初めて聞いた言葉でもないのに
その言葉の意味が上手く飲み込めなかった
頭がチリチリ痛んでその先を拒む。
「まさか、なんで知ってンのかとか言うつもりねぇだろうなァ」
『わたし…轟くんのことが好きなの?』
溢れた言葉は余りにも素朴で、純粋に知りたかったから出た
まるでずっと探していた宝箱の在りか教えて貰ったような感覚だった