第3章 𝔸𝕘𝕒𝕡𝕒𝕟𝕤𝕒𝕤𝕦
かたかた、と小さく音を立てながらバスは私達を運んでいく
ゆったり揺れる車内は気を抜くと睡魔に襲われるそうになる
「眠ぃのか?」
その声に漂っていた眠気が逃げていく
私は下げていた顔を上げ隣に座る轟くんを見上げる
今日のヒーロー基礎学は゛救助訓練゛
私達はバスで訓練場へ移動している最中だ
『なんだか心地よくて…
気が緩んでる証拠だね…見苦しいとこごめん』
「そうか、別に見苦しくねぇぞ
むしろ今のうちに寝といた方がいいんじゃねぇか?
ちゃんと起こすから安心しろ」
『いやいや!!私だけ寝るのはちょっと…
轟くんに頼ってばかりはいられないよ!』
「頼るって大袈裟だな
…あぁ、肩に頭乗せていいぞ」
あ、あたまぁ……!!!????
何を言ってるのぉ…???
私は金魚みたいに口をパクパクさせ、熱を帯びる顔を隠すように手で頬を覆う
『…はっ』
そのときクラスのみんなの(爆豪くんを除いて)視線が集まってることに気付く。みんな驚いていたり、ニヤニヤさせたり反応が様々だった
『こ、…これは違うのっ!』
「何が違うんだ?」
轟くん!!!!!!!
今いち視線が集まってることに気付いてない彼は首をひねる
そんなこと…言ったら…ッ
雰囲気は完全に何かを察していた
私は諦めて立ちかけていた腰を下ろし大人しく引き下がる
前から思っていたけど……轟くんって天然なのかな??
『寝るのはやっぱり大丈夫…
眠気吹っ飛んじゃって、ありがとうね』
むぅ…少し頬を膨らませて先程の返事をする
みんなに誤解されたのにモヤモヤしているのか
轟くんの無神経な言葉にモヤモヤしてるのかは分からなかった
『…………変な感じっ…』
轟くんの天然発言のせいで胸あたりになんらかの違和感を覚える
ちょっと前までこんなことなかったのに
なにこれ…?もどかしいよ
「ねぇ、 秋月 って
轟と"そういう"感じなわけ?」
轟くんに聞こえないようにだろう
声を潜めて、前に座っていた耳郎響香ちゃんが私の方へ振り返る
私は顔を小さく左右に振り、響香ちゃんに耳打ちする
『ち、が、う、よ
轟くんとは仲が良いだけ、皆が思うような間柄じゃないよ』