第3章 𝔸𝕘𝕒𝕡𝕒𝕟𝕤𝕒𝕤𝕦
『私もね轟くんの個性好きだよ』
あれから二週間経った
私は轟くんの本当の個性を知っている
゛半冷半燃゛
前に私が尋ねたとき
確かに彼は「氷」以外何も言及しなかった
言いたくない理由があるのかもしれない
私はあくまで"氷"に意味を絞った
「オレは好きじゃねぇ」
なんで?って聞き返したかったけど
それが出来ないからずっと触れてこなかったんだ
私は彼の顔を見ずに前だけを見つめる
『轟くんが好きじゃなくても私は好きだよ
誰から見ても格好良くて強い力』
「オレの力はオレのじゃない
…これはアイツの」
『轟くんのだよ』
出た声は余りにも冷静で静かなものだった
足を止めた彼に合わせて私も歩くのを止める
『私が好き、って言ってるのは
轟くんの個性だけじゃないの
個性は付いてきて、そこにあっただけ
私は私を助けてくれた轟くんが好きなの』
透き通ったオッドアイが大きく見開かれる
靡く風が心地良い______゛温かくて安心する゛
『轟くんの半冷半燃がなくちゃ轟くんじゃない
でもね、轟くんだから半冷半燃なの
どっちも揃って轟くんなんだ
それが私を助けてくれた轟くんなの』
あの日目にした氷はとても神秘的で
それを扱うキミはもっと眩しかった
『…って意味わかんないよね
私も自分で言っててごちゃごちゃで』
「………だ」
『…え?』
遠慮がちに聞き返すと轟くんはぱっと口元を片手で覆い隠し、そして避けるように視線を逸らされてしまった
そのあとの轟くんはどこか心ここにあらずで
いつもと違う様子のまま私達は最寄りで別れた