第3章 𝔸𝕘𝕒𝕡𝕒𝕟𝕤𝕒𝕤𝕦
仲良い…よね??
あくまで私が言っているだけで轟くんからしたらそこまででもないかもしれない
……クラスメイト?顔見知り?知人??
私がそんなことを考えてるとはつゆ程知らず響香ちゃんはふーん、と腑に落ちない顔をする
「いやでもさ、絶対何かあるでしょ
轟って普段から冷徹っていうかさ、一匹狼じゃん
けど 秋月 の前だけ明らかにやんわりしたオーラに変わってんじゃん!」
れいてつ?やんわり??
ぽけーとしてる私に響香ちゃんは分かりやすく溜息を吐いた
「まさか 秋月 気付いてなかったわけ??
誰からどうみても心許されてるって感じじゃん」
そうなの…かな
私は響香ちゃんから視線を離し、隣の彼を盗み見る
轟くんの中に私は存在しているの?
私の視線に気付いた彼は、目を逸らさず同じように見つめ返してきた
途切れない視線に耐えきれなくて下を向こうとしたとき
轟くんの手が私の頬へ伸ばされていく。私はその手の動きを追うのに全神経を降り注いでると言っていいほど気が気じゃなかった
彼の指先が目下に触れる直前___
「目障りだわッ!クソアベックがッ!!イチャつきてぇなら場所選べや!!!」
轟くんの前に座っていた爆豪くんの怒号によって彼の手の動きは止み引っ込んでいく。爆豪くんは轟くんを一睨したあと、私を強く睨んだと思えば顎を掴んできた
『んみゃ!!!?』
親指と人差し指に顎を挟まれた私は無力で彼が動かした方向に顔がついていく。爆豪くんが体を寄せ、私の顔に陰を作る
「次ニヤけたら爆ぜンぞ」
ドスのかかった低い声がかかり、それから乱暴に顎の手が離された。爆豪くんは荒々しく座席に腰掛け腕を組む
バス内はシーンと静まり返っていて今度は爆豪くんが視線の雨を浴びていた
「…あ?」
返り討ちにあった視線はいとも簡単に外れ
バス内は少しずつ呟き声や笑い声が充満していった
…わたし…ニヤけてた??
緩慢な私の態度が爆豪くんの気に障ったのかも…
消沈としていた私とは逆に隣の轟くんが爆豪くんを険しい目つきで見ていたなんて知らなかった