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花水木が咲く頃に ꕥヒロアカꕥ

第3章 𝔸𝕘𝕒𝕡𝕒𝕟𝕤𝕒𝕤𝕦





初めの方は何か話さなきゃ…!っていつも気張っていたけど
いつの間にか言葉が飛び交わなくても隣を歩いているだけで安らぎだった


『………あ』

私が小さく漏らした声を轟くんが拾う

「どうした?」

『あ、えっと…ちょっといい??』


私は彼から少し離れ、建物に隠れるようにそびえ立っている電柱の前にしゃがみ込む……こんな日照りの悪いところだと育たないよ

せっかく立派な花をいくつも身につけてるのに茎は生気を吸い取られたみたいに体を倒し萎えている
私は両手の光を構え、ちょこんと生えてるガーベラを照らした

轟くんが膝に手を付きこちらを覗き込む


「何してんだ」

『太陽の代わりになってるの
誇れることじゃないんだけど
私の光、植物の成長を促すことも出来るみたいで
完全に萎れてたりしない限り元気づけることが出来るみたい』

私は照れくさく笑い、引き続きガーベラの治癒に手元を集中させた

『ほら前に個性の説明した時に
軽い傷なら直せるって言ったでしょ?
あれ、植物にも適応出来るみたいなんだ』


折れかけていた茎がみるみるその背筋を伸ばしていく



『この瞬間が一番…個性を好きだって思えるの』

そろそろいいかな、と手を離し、捲れている花弁を丁寧に揃える


「…すげぇな。前から薄々思ってたが 秋月 の個性って"目に見えねぇもん"なのかもしれねぇな」


『目に…見えないもの?』

「あぁ、最初は 秋月 が言ってた通り
物理的な"光"の個性だと思ってた」


轟くんの前髪がふわりと風に揺らされ
綺麗な目元がよりハッキリ映った

胸がザワザワして心地良い



「けど、近くで見るようになって根拠はねぇけど 秋月 の個性に別のモンを感じるようになった」

「温かくて安心する
オレは好きだぞ 秋月の個性 」


゛好きだぞ゛
その言葉が耳から離れない
春の木漏れ日のような温かさに包まれる

ほのかな甘い香りは素敵な気持ちが芽吹く予感のような気がした


何も言わない私に対して何か思ったのか
「上手く説明できなくてわりぃ」
とバツが悪そうに言うから私は慌てて首を横に振った


キミが放った"好き"という言葉に無性に嬉しく感じてしまったなんて恥ずかしくて言えない

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