第2章 練習!
体育館に行くとサーブ練習をしているみんなの横で黒尾先輩が動画を撮っていた。
「先輩、何してるんですか?」
「後でフォームを見返すための動画撮ってるの。さっきの試合形式でサーブミス多かったもんで。」
「私にもできますか?」
「あー、今日はアドバイスしながらやるからまた今度頼む。手持ち無沙汰なら得点板片付けちゃってちょーだい。」
「分かりました!」
「山本、ちゃんとコース狙えてるぞー!次リエーフサーブ。」
「任せてください!俺のスーパージャンプサーブ見ててくださいよー黒尾さん!」
「は!?ジャンプサーブ!?」
先輩に言われた通りガラガラと得点板を移動させているとバチン!!とすごい音がしてボールが飛んできた。
「やっべ!」
「苗字っ!」
「危ねぇ!」
灰羽くんの打ったボールは特大ホームランであと数歩で倉庫に辿り着くはずの私の後頭部へ直撃した。その勢いで押していた得点板におでこをぶつける。泣きっ面に蜂とはこの事だ。後ろも前も痛い。すごい大きな音したし、めっちゃ恥ずかしい。
「いったぁ…」
「おい大丈夫か?」
痛みでしゃがみ込んだ私に黒尾先輩が駆け寄ってきてくれる。
「だ、大丈夫です。あれ黒尾先輩が2人いる…1人もらっていいかな…」
「すみません先輩!!」「リエーーフゥウ!!!危ないだろぅがああ!!」謝る灰羽くんに夜久先輩がブチ切れてる。
「灰羽くんごめんね、よけらえなかった…」
「脳震盪っぽいね…。呂律回ってない。」研磨くんが冷静に診断してくれて、これまた冷静な柴山くんがアイシング持ってきますか?と提案して、山本くんと犬岡くんはずっとあわあわしてる。
「いや、頭打ってるっぽいから保健室連れてく。海、後頼んだ。」
海先輩は了解、といつもの笑顔に戻りみんなに指示を出しはじめる。おお、副キャプテンっぽい。
「ホラ、行きますよ。」そう言うと黒尾先輩が横から私のひざ裏と背中に腕をまわして、グッと力をこめる。
ふわっと効果音が聞こえそうなくらい軽々しくいとも簡単に私を持ち上げると驚く私をよそにすたすたと歩きはじめる。
身体は連れて行かれてるのに心は置いてけぼりを食らったような気持ちだ。
「先輩!大丈夫です、自分で、保健室行けます、から、」
まわらない頭と呂律は打ったせいなのかいつもより近くで見る先輩のせいなのかわからなかった。
