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紫の薔薇を貴方へ

第16章 名前


 とはいえ、俺も自分が男を好きになるとは思わなくて。少しずつ関係を深めていこうという話になった。
 とりあえず二人ソファに並んで座ることにし、透くんが持ってきた紫の薔薇は目の前のテーブルに置くことにしたのだが。
「なんで紫の薔薇だったのよ?」
「紫は、ぼんさんカラーということで」
「まぁ、それは分かるけどね?」
「男同士の恋愛って、薔薇って言うんじゃないです?」
「ん……?」
 透くんにちょっと天然さを感じたが、まぁこれからもっと仲良くなればいいかと俺は思った。
「まずは出掛けちゃう?」
「え、今からですか?」
「記念よ記念。付き合った記念」
 自分でこう言うのは少し恥ずかしかったが、透くんの照れる顔が見られるからよしとしよう。
「……わ、分かりました」
「じゃあ行こうか」
「はい、ぼんさん」
「あ、最後にさ」
「……はい?」
「家にいる時は、本名で呼んでよ?」
「え……」
「俺の本名は──」
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