【呪術廻戦】五条悟から逃げたいので呪詛師目指します【R18】
第18章 百鬼夜行
傑の愛に応える事。
それは仁美が生き延びる事だ。
初めて仁美に愛していると伝えた。
本当はもっと違うシチュエーションで伝えたかった。
傑の愛の言葉を聞き、仁美はぐしゃぐしゃな顔で泣いた。
この言葉を伝えた時の仁美は笑っているはずだったのに。
どうしてか、傑はいつも別れの言葉は苦手な様だ。
いつも誰かを泣かせないと、別れを言えない。
うっうっと嗚咽を繰り返す仁美の背中を摩った。
「……さぁ行って…。」
傑はそっと背中を押すと、そのまま少し離れて仁美を見送った。
「……傑…絶対に来てね…。」
最後まで仁美は不安そうに傑を見ていた。
仁美は歩いた。
真っ直ぐに。
すぐに誰かに見つかる様に。
そう。
それは出来れば悟がいい。
傑から悟を離したくて、仁美は傑とは違い高専の真ん中を歩いた。
走りたかったのに出来なかったのは、涙で目の前の景色が歪んでいるからだ。
『…お嬢さん、確かに貴方は悟の好みのタイプだけど、話が飛躍し過ぎだ。』
『君に夢中になりそうだよ…。』
「うっ…うゔ…グズっ…うう…。」
嗚咽は止まる事なく、乾いた空気に響いていく。
『その前に、私に言う事は?』
『好きよ傑、ありがとう。』
『…本当に…君って女は…』
傑が呆れた様に笑って言うその顔が好きだった。
優しく抱き締められる腕に、やっと呼吸が出来た。
早く。
早く。
「誰か私を見つけて!!」
そう叫んでも誰も自分に向かって来ない。
それでも叫びながら歩くしか出来なかった。
自分が死んでも、傑を救いたい。
そんな仁美の気持ちは結局届かなかった……。