【呪術廻戦】五条悟から逃げたいので呪詛師目指します【R18】
第1章 五条悟から逃れたい※
悟が現れなかったら、ここで死ぬ。
(ー死ぬ?)
ドクンと大きく心臓がなって、スーッと頭の中がスッキリした。
(途中で死んだら、回帰は終わる?)
言いようのない高揚感が全身を襲って、仁美は笑みを漏らした。
もう一度呪霊を見上げた仁美の顔は、とても晴れ晴れとした笑顔だった。
術式が解けないなら、死んだって構わない。
仁美は自分を殺してくれる呪霊を愛おしそうに見た。
(これでやっと終わるかもしれない。)
呪霊が仁美に襲いかかる瞬間、仁美は目を閉じた。
その刹那で、あの匂いが全身を包んだ。
抱かれ慣れた心地よい腕の力が、仁美の体を持ち上げる。
目を開けなくても分かる。
呪霊の呪力が無くなっていくのを感じながら、仁美はゆっくり見上げた。
『大丈夫?』
何回も見たこの瞬間、悟のセリフも目隠しを取って仁美を見る表情も全て覚えている。
「……説明して欲しいな…。」
この場面で初めて聞く台詞、低い声。
仁美の心臓が再び高鳴る。
何度も願った瞬間が、今目の前にある。
「その残穢、僕がよく知っている奴なんだけど。」
笑顔だった記憶の顔は、目隠しの隙間から冷たい目で見下ろしている。
(ー出会いが変わった!)
仁美は高鳴る高揚感から、笑顔を堪えるのが精一杯だった。
やっと未来が変わる。
仁美は折れていない方の手で、悟の服をギュッと掴んだ。
冷たく見下ろす悟の顔が、今まで見た顔の中で、1番美しく見えた。
やっと、希望が持てた出会いに、仁美は目を細めて笑った。