第2章 余命宣告
妹の自由さには慣れている神無は眠そうにしながらもテキパキと準備を終わらせ、なんなら八雲の準備も手伝い1時間もしないうちに2人は家を出た。
「八雲。薬は飲んだか?」
新幹線に乗ると神無は八雲にそう言った。東京に行くことに気を取られていた八雲はいそいそとバッグから透明なケースを取り出した。
何錠も薬を飲む妹の姿を見て神無は何とも言えない気持ちになった。
(いつもは、忘れたりしないのに。)
幼い頃から治療方法のない病気に侵され、何度も死にかけている妹を神無は見てきた。今よりも小さな体で一晩中苦しそう布団でもがいている姿も見た。
それでも、明るく自分の思いのままに生きる八雲は神無にとって宝そのものだ。
親よりも世話係の女中よりも長くそばにいた彼には、何となく彼女が何かを隠しているような気がしていた。
それでも何も聞かないのはその秘密が自分を地獄に叩きつけるようなそんな予感がしていたから。
「八雲。」
「ん??」
窓の外の景色から目を離し、こてっと首を傾げ不思議そうに神無を見る八雲。まだあどけなさの残る顔。
「いや…なんでもない」
「えー、なにそれかまちょ?かわいくないよ〜??」
いじる気満々と言った表情で笑う八雲を見て、神無は口元を緩めた。
__東京着__
「大都会だねぇ!!」
八雲は息を大きく吸い座りっぱなしで固まった体を解していた。それを見て神無は引き気味に八雲を見る。
「それはこんな大都会でやることじゃないぞ。空気、汚ぇからな。」
「え〜?そんなことないよ!」
「都会は色々発展してるから空気が汚ぇって相場は決まってんだよ。」
歩き出す神無の後ろを納得の行かない顔で着いてくる八雲はあることに気がついた。
「ね、かんちゃん。五条先生に連絡するの…ワスレチャッタ」
あちこちに泳ぎまくる八雲の目。焦り散らかしてるのは誰がどう見ても明らかだった。
「はぁ…五条さんなら大丈夫だろ。連絡しておく。」
「うわぁ!かんちゃんありがと〜!!」
泳いでいた目は定位置に戻りキラキラと輝きを取り戻した。