第6章 カウントダウン
本当に宿儺の器かと思うほど純粋でいい子だ。
「予言じゃなくて、私が起こす?の。これからやらなきゃいけない事があるんだ。」
「ふーん。…どういうのか俺は知らないけど、八雲さんなら大丈夫だからな。」
優しい子だね。こりゃあモテるなぁ。
「ありがとう。虎杖君。じゃあ、行ってくるね。」
「おい。小娘。」
「あ。ごめん!勝手に出てくんなよ!」
虎杖君が自分の頬を抑えた。
「いい加減覚悟を決めろ。」
「は、はは。それは君なりの激励って事で受け取っておくよ。」
「ふんっ。好きにしろ。」
宿儺はすっと消えていった。
虎杖君に手を振ってかんちゃんの所に急いだ。
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「かんちゃん…。」
寂しげなその背中に声を掛けるといつもの眠そうな顔で振り向いた。
心做しか目が赤くなっているように見えた。
「泣いてたの?」
私が泣いてもかんちゃんが泣くなんてこと無かった。
「寝てただけだよ。八雲は、やっと覚悟が出来たのか?」
私は先生に借りた呪具を手にかんちゃんに近付いた。
「ごめんねかんちゃん。私が独りにしないでなんて言ったから。かんちゃん優しいから戻って来てくれたんだよね。」
かんちゃんと向き合う。綺麗な平行眉が八の字に垂れ下がっている。
「俺は優しくない。」
「本当はね。全然覚悟出来てない。かんちゃんがいないと朝起きれないし、予定も忘れちゃうし、薬も飲み忘れちゃう。」
私は、呪具を握り締めて、かんちゃんの心臓の上に切っ先を当てた。
「そんな顔されたらまた戻って来ちまうだろ。」
私の目からは大粒の涙がボロボロと流れ落ちる。
「長生きしろよ。」
かんちゃんは跡形もなく消えた。
どうやって高専に戻ったかは分からない、気がついたら校舎の影で蹲っていた。
誰かが近づいてきて、しゃがむ気配がした。
肩に手が置かれる。
「八雲さん。」
「虎杖…く…」
「小娘。クククッ酷い顔だ。」
「最低…。笑いに来た?私は君みたいに人殺しは慣れてないの。」
何が人殺しだと宿儺は笑った。虎杖君の顔なのに凄まじい嫌悪感が襲った。