第6章 カウントダウン
稽古は明日からってことで、ホテルに戻って眠ることにした。
目を覚ましてみればまたまた真っ暗闇。今度は仰向けに横になっていた。
体を起こして周囲を見渡す。骨ばかりのこの場所には何度来ても慣れない。
そのうち上から声が降ってくる。と思っていたらすぐ近くで声がした。
「おい。小娘。お前、何も変わらんな。」
「失礼だな。何もしてないんだから何も変わる訳ないじゃないか。」
開き直るしかないこんなの。大体、なんで17のクソガキが1000年前の史上最強とか言われた術師と殺り合えるようになるのに3ヶ月で足りると思ってんのさ!
「ていうか、私の勝ち基準なに?」
「そうだな。暴走せずとも全力を出せるのなら勝ちとしよう」
なんだよ。そんなのお前の匙加減じゃないか。全力かどうかなんて分からないじゃん。
「なんで私なの?虎杖君の周りにはいっぱい優秀な人がいるのに。」
「気分だ。」
「なにそれ」
何故か笑ってしまった。その気まぐれに私は悩まされているなんて馬鹿馬鹿しく思えた。
宿儺は近付いてくると私を抱き上げた。
「抵抗しないのか。」
「抵抗した方がめちゃくちゃにされそうだからね」
この間の痛々しい自分の身体が思い浮かんだ。
「変なの。呪いの癖に人のことちゃんと丁寧に抱えるなんて」
「ならば貴様は担がれたいか」
「いいえ、これで結構です。わがままは言いません。」
私がそう言うと、ふんっと鼻を鳴らして歩き始めた。どこに連れていかれるのかは全く分からない。
怖くない訳では無いけど、何となく最初の頃の震えるような恐ろしさを感じることはなくなった。
「虎杖君は知ってるの?リベンジマッチ。」
「知らん。小僧などどうでもいい。」
えぇ…。器なのに?言い返せば居候の身なのに?大家さんには何も無し?常識ないじゃん。
呪いに常識なんて関係ないんだろうけど。
「貴様が如月神無を祓えるのか、よく見ていよう。」
「なんでそれ知って…」
おでこにキスが落とされ、急に眠気が私を襲った。