第6章 カウントダウン
「憂太みたいな例外があったけど、神無は今はただ君の傍にいる呪霊だから。いつ危害を加えるようになるか分からない。」
先生は何かを言いかけて、そこで口を噤んだ。
でも、私には分かった。
"今にも人を殺すかもしれない''
先生はそう言いたいんだよね。なんだかんだで優しいから。気使ってくれたんだよね。
「僕が変わってあげたいところなんだけどね。神無は君にとってのトリガーだから。君が自分で何とかするしかないんだよ。分かるよね?」
私は黙って頷いた。
「大丈夫。八雲は優秀だからね。自信もって!」
そう言って先生は笑った。かんちゃんを祓うのは自分で無ければいけない。その事実に心は重くなったけど、先生の笑顔でいくらか楽になった。
このちゃらんぽらんでバカなところが良いところだよね。
「話は終わったよね?ほら食べて食べて!」
先生にケーキを勧められ、出して貰った紅茶と一緒に食べた。すごく高いんだろうなっていう味。すごく美味しい。スポンジはふわふわでクリームは甘いけど諄くない。
「あ、先生。私、宿儺とリベンジマッチあるの。」
「え?」
「多分死ぬよ。」
「それ、いつ?」
開いた口が塞がらないとはこの事だろう。口に運んだケーキが先生の口に入ることは無かった。
「来月。あとね。かんちゃんには言わないで欲しんだけど、宿儺と闘って死ななかったとしても、残りは7ヶ月しか生きれないんだよね」
先生は口を真一文字に結んだ。
「宿儺の話は分かった。でも、7ヶ月ってどういうこと?」
「先生も私が病気なのは知ってるでしょ?死んじゃうんだって。今はこれと言って目立った症状は無いから全然実感無いけどね。」
先生はケーキのお皿を机に戻した。
「八雲。宿儺とのリベンジマッチってまさか宿儺を殺すとかそういうんじゃないよね?」
「分からない。でも、気絶しないくらいになればいいのかな?私の勝ち基準全然分からない」
「はぁ。来月だっけ?なんでもっと先に言わないの。」
ちょっと怒ってる…。最強の怒りを買うことほど怖いことは無い。
かなり呆れられたけど、先生はやっさしいから稽古つけてくれるらしい。それ相応の覚悟はしろとの事。