第6章 カウントダウン
にやにやと笑う直哉に心底腹が立った。殴り飛ばして、ぐちゃぐちゃにしてやりたいと思った。でも、それは出来ないから。やっちゃいけないから。
握り締めた拳を抑えて、感情を殺した。
「早く帰って。死にたくないならね。」
襖を開けて、直哉を睨むと、大人しく立ち上がった。
「おぉ〜、怖。さすが呪霊といるだけあって野蛮やね」
そう言い残して、直哉は部屋を出ていった。
どうしようもない怒りが私を蝕んだ。
気が付けばめちゃくちゃになった部屋の真ん中で丸くなって眠っていた。
特に理由のない涙が溢れ出た。
そして私はまた眠った。
その日もかんちゃんは帰ってこなかった。
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翌日。私は五条先生の元へ行った。
「あれ?かん……おいで、ちょうど美味しいケーキを買ってきたんだ。特別にあげるよ。」
五条先生は"神無は?"と言いかけて、私の顔を見て辞めた。よっぽど酷い顔をしたんだろう。
だって、皆、気がついてないはずないんだ。
「それで、今日はどうしてここに来たの?」
五条先生の優しい声に、目の前のケーキがぼやけて、大粒の涙が頬を伝い始めた。
「ごめ…なさい…!ごめんなさい!」
「ちょっ、八雲?!僕、君に何かされた覚えないけど?落ち着いて、話してごらん?」
ソファに座る私の横にしゃがむと背中を摩ってくれた。
「かんちゃんが…呪霊になったのは私のせいなんです。私が、独りにしないでなんて言ったから。」
「なんだ。そんな事か。」
「え?」
五条先生の言葉に驚いて言葉が出なかった。顔をあげて五条先生を見ると、いつもの巫山戯た笑みを浮かべていた。
「ちゃんと言ってくれるまで待ってただけだよ。神無はあの時確かに死んだからね。僕が確認したから。流石に八雲が呪いかけてるなんて予想もしなかったけど。憂太の時と似てるね。ただ違うのは…」
そこで言葉を切って、先生は立ち上がった。
「八雲。君は神無を祓わなくちゃいけない。」
分かってた。分かってたけど。
いざ、その言葉を聞くと、耳を塞ぎたくなった。