第5章 宿儺と私。*
目を開くとそこはホテルの部屋だった。かんちゃんはまだ帰ってきてない。
酷く汗をかいていて気持ち悪かった。何故かは分からないけど、切り裂かれた学ランは元に戻っていた。
服を脱いで浴室に入り、鏡に映った自分を見て息を飲んだ。
力いっぱい噛まれて青紫に変色している部分、強く吸われて赤黒くなっている部分。
かんちゃんはいないし、宿儺に裸を見られたのは本当だし、最悪の気分だ。早く帰ってきてよ。かんちゃん。
シャワーを浴びて部屋に戻ると、かんちゃんが帰ってきていた。
「あ、かんちゃん!どこ行ってたの?ずっと待ってたのに。迎えにも来てくれないし…」
「ああ、悪い…。そんな事よりなんで宿儺の残穢が八雲に…」
私が近寄るとその分距離を取られた。
「まぁ、色々あって。そんな事より…呪具壊しちゃった…。ごめんね。」
「ああ。五条さんから聞いたよ。あれ程感情的になるなって言ったのに。」
「だって、かんちゃんがいなくなったら私…独りだよ。」
かんちゃんは黙りこくってしまった。目も合わない。少し空気が重くなった。
「八雲は独りじゃない。俺が居なくても大丈夫だよ。」
「ねぇ。やめよう。こんな話。かんちゃんが居なくなるみたいじゃん。」
私はかんちゃんに背を向けて、泣きそうになっているのを見られないようにした。
かんちゃんの困ってる顔も見たくなかった。
私の我儘でかんちゃんがこうやって一緒にいてくれてるのは分かってるけど、もう少しで私居なくなるから。
一緒にいたっていいよね。3ヶ月何もしなかったら負けて死ぬんだから。そしたらかんちゃんは自由だから。
許して。