第3章 秘密
「八雲。起きろ。」
神無は全く起きる気配のない八雲の顔をぺちぺちと叩いた。それでも起きる気配はない。強めにデコピンをするとやっと唸り声を上げてむくりと体を起こした。
「交流会だろ。先に五条さんとこ行くんだから早く支度しろ。」
目は開ききらないもダルそうにベッドから降りると黙って寝癖を直し始めた。
「忘れ物ないか?」
「ないよー」
ホテルの鍵を閉めると神無は真っ直ぐに歩かない八雲の背中を押して足早にエレベーターへと向かった。
ホテルの外に出ると呼んでいたタクシーが止まっていた。八雲を押し込み高専の近くを指定した。
タクシーを下りると、八雲を抱えて五条との待ち合わせ場所に急いだ。
「八雲ー?起きてる?」
「んーー」
五条に一向に目の開かない八雲を渡すと、神無はぺこりと礼をした。
「じゃあよろしくお願いします。八雲。呪具壊すなよ。俺は近くにいないからな。」
「んー」
理解はしていないであろう八雲を見て、ため息をつくとまた五条に礼をしていなくなってしまった。
「じゃあ行っくよー。」
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五条と八雲が虎杖を連れ会場に向かっている頃、東京校と京都校の他の生徒は合流していた。
「乙骨も八雲もいねぇじゃん」
東堂の一言に伏黒恵は首を傾げ、隣に立つ禪院真希に尋ねた。
「八雲って誰ですか?」
「八雲は京都校の2年だよ。ただの自由人だよ。」
ため息混じりに真希は答えた。
京都校の生徒同士で喧嘩が始まりそうになった時、手を叩く音が響く。
「はーい。内輪で喧嘩しない。全くこの子らは。
で?あのバカは?」
「悟は遅刻だ。」
「あのバカが時間通り来るわけねぇだろ。」
「誰もバカが五条先生とは言ってないですよ。ん?」
ガラガラと物音のした方に恵が視線を向けると、台車を押しながら走る五条がいた。台車の上に乗る大きな箱の上にはピンク色の何かを抱えた八雲が座っていた。
「五条悟!と八雲!」
台車が止まるとピンク色の何かを五条に渡し、八雲が台車から降りた。