第4章 鉄血と血と(1話)
「おーい、いたか三日月!」
入り口からオルガを探していたガタイの良い男、雪之丞が現れて三日月は返事を返す。するとオルガが揶揄う様に雪之丞に呼びかける。
「どうしたー、おやっさん」
「どうしたじゃねー、マルバが呼んでるぞ」
「社長が?」
マルバとはCGSの社長で、金に目がない男である。またオルガをいいように使うつもりだろう。
「つーか、ここはいるなって言ったろ!」
「姉貴に言ってくれよ」
「ティフェ!」
『えー、あったかいんだもん』
残念と肩をすくめるティフェだが反省の色は皆無なのはいつもの事だった。雪之丞は頭を抱える。彼女は自由だった。それは彼女の家柄が地球の上流階級という事もあってマルバが目を瞑っていたからだ。しかし彼女は整備士として雇われているので仕事もちゃんとする。休める時に休んでいるだけだ。
文句を言うオルガの後に続きながら、両手を天高く伸ばして欠伸をするティフェはこれから訓練だと言うのに呑気なものだった。
三日月と昼は何か推測ゲームをしようと振り返ると、彼がMSモビルスーツを見上げて立ち止まっていることに気づいた。
『ミカー!行くよー』
彼に届く様に口元に手を寄せて呼びかけると、すぐ振り返る彼が返事をしてコチラへやってくる。三日月は最後、いつも見上げている。
自分の相棒になるガンダムの存在を、彼なりに何か感じているのだろうか。