第3章 出会い
男は顔面から地面に倒れ込んだ。
慣れた様に地面に着地して、子供達に近づいて様子を確認する。
『大丈夫!?変な事されてない!?』
子供達は驚いて私を見つめる。
銀髪と黒髪の子供は私より少し背が低い。
「いってぇな…このクソガキ!!」
起き上がった男が腕を振り上げて向かってくるが、腰から出た細い動線の様な個体物質が男を締め上げる。首を強く締め上げて、口から泡を吹きガクガクと体を震わせた所で解放する。
『目障りだから、さっさと消えて』
「ひ、…ひぃ」
この辺は治安が悪い。抵抗できない子供を餌に私服を肥やしている輩も多く存在していた。目のつく範囲なら助けたい。
「あ、…なんで」
銀髪の子供は頭と二の腕から血を流しながら私に警戒している様だった。誰かを助けるなんて、この辺では珍しい事だ。みな見て見ぬ振りをする。
『たまたま通りかかったから、助けただけだよ』
私は鞄からハンカチを取り出して子供の腕にきつく巻き付ける。刺されたのかクリーム色のハンカチが真っ赤に染まってしまった。
『君は?怪我はない?』
もう一人の子供を見下ろす。
水色の海を思わせる瞳が真っ直ぐ私を見上げていた。
「うん。怪我はない」
『よかった』
どこかキラキラした目が可愛くて無意識に頭を撫でてしまった。
『あ、ごめん!』
失礼だと思って慌てて手を引っ込めるとぼーっと私を見上げる大きな瞳。可愛い。
そして子供の手に握られている銃を見て胸が締め付けられた。
火星では自分を守る為にしかたない事だ。
『…家はどこ?送っていくよ』
その銃が使わないで済む様に祈ることしかできない。
「いや、送ってもらう必要は…」
「CGSで働いてる」
サラッと答えた黒髪の子供に、驚いて少年を見る銀髪の子供。
「み、ミカ!」
「だって送ってくれるって」
「そうだけど」
『CGS』
CGSとは民間警備会社だが、悪い噂をいくつか聞く。
こんな子供も働いているのか…
これが特別な君達との初めての出会いだった。