第3章 出会い
ーーーー出会いは唐突にやってくる
『あー、わかってるってお父さん!』
ヘルメットに繋がっているマイクに大声で返事をする。
《調査はいつまでかかるんだい?花嫁修行もあるんだから早く家に帰ってきたほうがいいと思うんだ。もうドレスも選んで》
『気が早いって!!』
つい先月決まった婚約に父はとても喜んだ。しかし私は反対だった。なぜそうなったのか、前世と変わらずマクギリスの婚約者になってしまったのだ。
目線も合わせず、そんなに接点も作らなかった。
カルタ達と会う以外は父の仕事を手伝っていたのに、彼は前世と同じ様に婚約の申し込みをしてきた。彼の正体を知らない父は飛ぶように喜んだ。
《週末はマクギリス君が家に来てくれるんだよ?ケーキを焼いて待ってるから火星から戻って来れないかな?》
家に来てくれる?
前世では一度も来てくれなかった。会いに行くのも私から。今世で違うのは私自身。私の腰に埋め込まれた個体物質。それが目当てで強行突破しているのだろう。
人通が多くなってきたので、バイクのスピードを落としてエンジンを切る。
『お父さん。私は研究が好きなの。結婚なんてしないから』
《ええ!?あの優秀なマクギリス君だよ!?》
『結婚ならカルタとする!』
《でもカルタちゃんには断られたって》
『恥ずかしがってるだけだから、絶対カルタと結婚するの!』
マクギリスと結婚しないためにカルタを持ち出して一方的に電話を切る。カルタに結婚を申し込んでもキッパリと断られてしまう。
ずっと一緒にいると約束してくれたのはなんだったのか…
ガラクタが沢山積まれている重いバイクを押して町を歩くと男の怒鳴り声が聞こえた。朝からうるさい男の声は一方的で頭に響いた。
静かにして欲しいのに…
通りすがりの人は皆、視線を逸らして見ないふりをする。早足で通り過ぎていく女性から声の方へ視線を向けると少年たちが引っ張られていた。黒ずんだ大人用の服を着ている子供は顔が傷だらけだった。
バイクを止めて貴重品が入っている鞄を背負って走り出す。男が消えた裏路地へ迷わず飛び込んで男の背中に飛び蹴りをくらわせた。