第2章 新しい道
白服の大人達の間をすり抜けて箒で床をパタパタと叩く。
そんな私を彼らは眉を下げデレた顔で見守っていた。
『赤い…宝石?』
数百個ある部屋の隅々まで調べて2週間が経った頃、それは突然現れた。
目の前には巨大なカプセルに入れられた小さな宝石。
近くで見ると握り拳ほどの大きさでルビーの様に輝いていた。
今まで金属の様な破片や岩の様な個体物質ばかりだったので珍しく思い近づく。カプセルに手を伸ばすと淡く光り輝いた宝石がスライムの様に変形する。
それは私の手を包もうとカプセルに張り付いた所で室内に警報が響く。驚いて両手で耳を押さえると、宝石は固まった。
「お嬢様!!大丈夫ですか!?」
続々と大人達が現れてパソコンやカプセルの周りに集まり、その中の一人が私の側にやってきた。
頷くと安心した様に顔を上げて大人は固まった。
「…個体物質が移動している?」
パソコンの画面を見ていた大人が騒ぎ出した所で入り口から父が慌ててやってきた。
「ティフェ!!」
『お父さん!』
怖くなって父に抱きつくと抱えられる。
「大丈夫?怪我してないかい?」
『うん』
ギュッと抱きしめられて安心した。
「博士…こちらをご覧下さい」
声に誘われる様に視線をカプセルに移動させる父は目を見開いた。
「どうして、こんな近くに移動してるんだ?」
「博士!!これをご覧下さい!!」
パソコンの方から切羽詰まった呼び声に父は私を抱えたまま駆け出した。
画面に映っていたのは誰もいない部屋の映像。
宝石が光輝きアメーバの様に手を上に伸ばすと、ドアが音を立ててロックが外れる。そこに、私が箒を抱えたまま部屋に入ってきた。その後は私がカプセルに触れて宝石が動く所までしっかりと映っていたのだった。
「博士…もしかしたら、お嬢様が…」
父は私をギュッと抱え込んで黙り込む。
…私がなに?
「…この話は後でにしよう」
私の目の前では話したくないらしい。
悲しそうな表情をしている父に私は何も言えなくなった。