第10章 高杉 あなたのことば
「死ぬな。と言ったら?」
「意地でも死なない。」
「なら死ぬな。」
「承知しました。」
晋助は煙管を置き、
私に荒々しく口づけを落とした。
昨日とは違う少し苦い味。
「勝手に生きるのは構わねェが、勝手に死ぬのは許さねェ。」
「晋助も勝手に死んだらダメだよ。私の許可制。」
晋助の首に腕を回し、
より2人の温度が密着する。
「安心しろ。アキを1人にするくらいなら、俺がお前を殺して、一緒にそっちに逝ってやる。」
そう言って、
再び私の吐く息も、吸う酸素も丸ごと飲み込んでいった。
死ねと言われて死ねるだなんて、
笑われる程滑稽だなんてことは分かっている。
そんなこと晋助が言わないことも分かってる。
優しいあなたの言う台詞なら、
きっとそれは優しい意味を持っているはずだから。