第10章 高杉 あなたのことば
――お前は俺に死ねと言われたら死ねるか?
昨晩、身体を重ねながら晋助にそう聞かれた。
自分から聞いてきたくせに、
答えなんて求めていないかのように行為を続け、
結局答えずに朝を迎えた。
いつもより絶対重力が強めにかかっている気がする。
身体が重い。
そんな重い身体を動かすでもなく、
隣で煙管を咥える晋助を下から見やった。
「目ぇ覚めたか」
「うん」
情事後の嫌ではない気だるいが空気が流れる。
「眠い。」
「まだ早ぇ。寝てろ。」
晋助はそっと髪を撫でてくれた。
皆が知っている獣の彼と、今のこの優しい手の彼はどちらが本物なのだろうか。
「私ね、多分死ねると思うよ。」
「あ?」
少しだけ考えてそう伝えた。
「晋助が聞いてきたじゃん。昨日。俺に死ねと言われたら死ねるか?って」
「…そんなこと言ったかもな」
晋助は少し遠くを見つめた。
彼がどこを見つめているのかは私にはわからない。
「晋助が、私は死ぬべきだって思ったなら、それは正しいことだと受け止めるよ。」
「てめぇは馬鹿か。」
「え、ひどい。」
気だるい空気が少し軽くなった気がした。