第7章 銀時 ただの救世主
こんな状況でも銀ちゃんを怖いとは感じなかった。
私の手首を押さえる手がとても優しいからだろうか。
押し倒されているわりに、銀ちゃんの体重が私に乗らないようにしてくれているからだろうか。
それとも、銀ちゃんのまっすぐな瞳に心奪われているからだろうか。
誘ったとかそんな気持ちは一切なかったけど、
ある意味棚から牡丹餅な気分になっていた。
耳まで熱が充満するのを感じた。
「あーその顔反則。
アキ…そんな顔誰にもすんなよ?」
あれ、私はなんで銀ちゃんを部屋に呼んだんだっけ?
だってそれどころじゃない。
脳みそが溶けそう。
銀ちゃんの手が私の手首から離れ、頬にうつる。
「なぁアキ…喰っていい?」
目の前にいるのは私の元救世主。
今は?
――狼まであと何秒?
(違う。ただスーパーマンの服を着ただけの狼だったんだ。)