第6章 沖田 恋ってやつは
「アキは甘いものが好きなんですかィ?」
あまりにも美味しそうに食べるものだから。
「大好きです!」
目をキラキラさせて万面の笑みで答える。
一瞬、自分への言葉のように錯覚して頭が真っ白になった。
「…あ、今度どっか甘いものでも食べに行きますかィ?」
「え!ホントですか!行きたいです!なかなか1人じゃ行きにくいお店とかもあるんですよ!」
「アキの行きたい所ならどこでも付き合いますぜィ」
「ホントですか?!やったー!!!ありがとうございます!沖田さん!!」
1日でも、
数時間でも、
数分でも、
アキを独占できるなんて。
じゃあこの日にしましょうだなんて約束ができるとは。
初めてアキの笑顔を見たとき、
正直団子なんてどうでもよくなった。
彼女にとって何も特別でない
そんな小さな出来事が、あの日以来俺の記憶から離れなくなった。
この先どうしてやろうか。
人間ってものは欲張りで、
一歩近付くともう一歩近付きたくなるものらしい。
あと何歩近付けば、アキは俺のものになるんですかねィ。
―恋ってやつは
些細なことをきっかけに生まれるらしい。
(きっかけはただの君の笑顔。)