第3章 山崎 マヨネーズの人
「わ、私帰ります!!
助けてくださってありがとうございました!!!」
ダメだ、なんだか頭がまわらない。
この状況から逃れるため、その場を立ち去ろうとした。
「なんか引きとめてごめんなさい!怪我も何もなくてよかったです!」
お互い勢いだけで会話をしているようだった。
多分お互いに頭が回っていない。
「あ、アキです!私の下の名前…」
なんとなく知ってほしくて。
あわよくば呼んでほしいなぁなんて。
「へ…?あ!はい!アキさん!また、買い物行きますね!」
「っはい!待ってます!」
そう答えて、背中を向けて家に向かって歩きだした。
あぁまた顔が熱い。
違う。ずっと顔が熱い。
名前を呼ばれたことと、
また会えるということに気持ちが高揚した。
次に会った時、普通にいらっしゃいませと言えるだろうか。
もう今から緊張する。
今度からはパートの人に怒られない程度にもっとちゃんと化粧していこう。
こんなにもバイトが楽しみになったことは初めてだった。