第1章 Prologue
『へぇ〜豪華客船……』
ルカは瑞希からこの話を聞いて口角をにいっと上げた。
『しかも紫苑1人で。珍しいこともあるのね……』
「まあ、実際には昔馴染みとクラスメイトの2人がいるから1人じゃないけどね」
今年、紫苑に誕生日プレゼントにあげるリボンの柄をスケブにメモしながら瑞希はルカに応えた。
『それでも十分すごいと思うわ。最初のミクや瑞希から聞いた紫苑の印象からだいぶ変わったわね。やはりまふゆだけでなくてあの子も少しづつ変わり始めているのね』
「まあね。あの頃の紫苑と比べたらだいぶ変わったと思う。ボクからしたらちょっと寂しいけどなぁ。ボクたち、一応建前上だけでもきょうだいなんだけどなぁ……。やっぱりボクもバイト休んでついて行けばよかったなぁ……」
瑞希は作業をする手を止めて紫苑から届いた紫苑と類と彰人の3人のスリーショットや船内の写真をルカに見せながら少し寂しそうに話した。
『ふふ。瑞希のシスコンっぶりは相変わらずね』
「そんなんじゃないよ。ただボクは紫苑が心配なだけだよ。でも、紫苑を旅立たせるって決めたのもボクなんだし、もし紫苑が嫌な思いをしたらボクは責任を取るつもりだよ」
『瑞希らしいわね。まあなにかあったら私も様子を見に行くわ。それに可愛い子には旅をさせよって言うじゃない?』
「……そうだね。でも、帰ってきたらいっぱい構ってあげるんだからね!」
なにかの意思を高く決めた瑞希は両手を固く握った。