第3章 【交錯する想い】
「そういやさぁ…。
お前たち、アレ、守ってる?」
「アレって?」
「レンアイキンシ。」
「…もーー! 紫耀、何言ってんの?笑
守ってるに決まってるじゃん!」
口元に当てられたタオルのせいで、
海人の声がくぐもる。
…すぐにわかったよ、
海人が嘘をついたことくらい。
俺を誰だと思ってんの?
海人は嘘をつくとき、
わかりやすく口元を隠す。
わかっちゃうんだよ
俺はずっと、お前のことを見てきたから…。
事務所に入ってきたばっかの頃、舞台袖で
「…怖いよ」って声を震わせてる海人を見て
守りたいって思った。
飲み屋で絡まれたときも
すぐに落ち込んで泣いてる海人を見たときも
俺が海人の盾にならなきゃって。
「紫耀はオレのヒーローだから!」
屈託のない笑顔で俺についてくるお前にとって
カッコいい存在であり続けたかった。
俺に憧れて、高校卒業と同時に俺と同じ場所に
ピアスを開けてきたお前のこと
観葉植物に『しょうくん』って名前を付けて
育て始めた海人のこと、心底かわいいと思った。
廉と楽しそうにしてる海人を見ては
正直、イラついた。
『グループ内恋愛禁止』
海人、知ってた?
あのルールは俺が俺のために作ったルール。
そうでもしないと
自分を保てそうになかったから。
海人を…海人の才能を
自分だけのものにしたいっていう気持ちが
抑えられそうになかったから。
他のメンバーは多分、薄々…気づいてた。
けど、きっと
海人は気づいてなくて。
俺、なかなか役者じゃん…?苦笑
呼吸もようやく整ってきた俺は
さっきまで自分の手に持ってたタオルを
海人の首に巻き付けて戯れる。
「ちょっ!! 紫耀ーー笑
これ汗拭いたやつでしょ?! もーー!」
「俺の汗だから汚くねーだろ笑」
「ファンのコからしたらそうだろうけど、
汗は汗じゃーん!笑
…ん? でも、確かにいい匂いする笑」
「あの平野紫耀だからな笑」
「ふふっ」
廉とおんなじようなこと言ってるし笑
やっぱり、この二人って…
オレには入り込めないような、
根っこで繋がってるみたいなのがあるんだよね。
本人たちは多分、そんなことないって
否定するんだけど、そこも含めて
しょうれんだなぁ…って愛おしく思う。