第25章 【想い人、憑依型につき】
―――あかん。
これ、マジで、引き返せんかも…
我に返った俺は海人に覆い被さっとった体を起こし
海人から距離をとるように背もたれにドカッと体を
預け、誤魔化すように笑い飛ばした。
「あっぶなー!海人のそれ、何?役作り…?笑
めっちゃ色気っけやん」
「いや、今回の役はそっちじゃダメだから!
オレは生活のためには何でもする感じだし。
だから、残念ながら逆ベクトルだわ笑」
「ふはっ!逆ベクやった?笑」
「うん笑 あでもこの次の95撮り終わったら、
女の子と入れ替わるやつの撮影があって…」
「海人、マジ忙しいやん!てか…えっ何?
男女が入れ替わるやつって…“君の名は。”?笑」
「れぇん!それ、いっちゃんダメなヤツだから!笑」
「…あかんかった?笑」
「ギリギリ攻めすぎてるって笑 そこデリケート
過ぎて制作陣もピリッピリだから!笑
まぁ、そんな感じのスケジュールだから
把握よろしくね!」
…よろしく?よろしくって何なん。
結局それから暫くは、楽屋の合間やらにちょこちょこ
俺を盗み見ながら描かれて。
「れぇん!やったよ!
廉を描いて練習させてもらったおかげで
オレが描くシーン、追加された!!
めっちゃ嬉しい!ありがとう!!」
俺の手を両手で包んで握手して、感謝された。
俺は何もしとらんけど、そういうことなら
視姦するような海人の視線に堪える日々も報われた
んやな…と、相方の仕事を海人と一緒に喜んだ。
***
それからしばらく経った頃、
俺が違和感を覚えたのは撮影のとき。
海人の肩を抱く指示に応えて抱いたとき
海人が一回り小さくなったように感じた。
ひとしきり撮り終え、
一旦休憩に入ったタイミングで
「…海人、痩せた?」と声をかけると
海人は少し驚いたような表情をして
廉には何でもお見通しだね、なんて笑った。
例の撮影に向けて筋トレを一旦休憩してること、
炭水化物を抜いてダイエットをしてることを
告白されて、あんま無理すんなよと返すと
そっくりそのままお返しするわ!と笑われた。
その頃から…海人が可愛く見えてたまらんくなる
ときが、ちょいちょい、あって…正直戸惑う。
「…廉くん、ごめんね?ちょーっと表情硬いかも!
一旦休憩いれよっか!」
「…すんません、」