第25章 【想い人、憑依型につき】
「…にしてもさ?海人って演技仕事始まったら
自分が演じる役のことめっちゃ考えるし
さっきみたいなときも集中力エグいやん。100%
以上注ぐやん。そういう海人のこと尊敬しとるけど
でもそれって…、しんどくないん?」
ときどき、心配してしまうんよ。余計な心配なのは
わかっとるし、過保護なんかも知らんけど、、
俺は海人にはできるだけ辛い思いしてほしくないし
いつも幸せそうに笑顔でおってほしいから…。
どうやったって、心配してまう。
「んー…しんどい、と思ったことはあんまないかも。
楽しい、が勝つかな!それにさ。そうやって
頂いた役の人生を考えたりその人の考え方に触れる
と、得した気がしない?」
「…得?むしろ俺は時間勿体ないと思っちゃうかも。
やって、役者の仕事はセリフ覚えることやん。
そんなん考えたところで、覚えるセリフは
変わらんやろ?
それやったら勿体ないなって…俺は思っちゃう。
やって、自分で考えた結果その解釈が違うことも
現場で出てくるわけやん?」
「あー…確かにあるね!笑 けど、何ていうか…
髙橋海人の人生は1回きりだけど、その人の人生も
作品を通して擬似的に生きることができるじゃん?
だから、自分的な解釈するのが楽しいんだよね!
勿論、監督さんとか他の役者さんが求める人物像と
違ったら現場で擦り合わせなきゃだけど、
それも含めて楽しいよ!」
そんな大変そうなことを本当に楽しそうに
キラキラと目を輝かせて語る海人は
根っからの表現者なんやろうな、と思う。
俺らの仕事柄、役が抜けないとかは他の仕事に
差し支えるから無いんやろうけど、なんていうか…
そうやって一つ一つ丁寧に演じた人間が
少しずつ、少しずつ海人の中に蓄積されていって
人間性が豊かになっていってるんやろうな…と思う。
そんだけ、自分に厳しく頑張んのに、
人にはその厳しさを求めんどころか柔らかくて
可愛いのが海人のすごいところやと思うし、
愛され力に繋がる魅力よなぁ、と思う。
そんな海を間近で見とったら
俺も自然と、頑張りたくなんのよね…。
「あとまぁ、海人が可愛く見えるんはネズミの
せいかも知らんよな。富士額と相まって海人って
世界の人気者のミッキーさんみたいやし!」