第20章 【囚愛の果て】
廉の愛情は
その次元をとっくに越えたところにあって。
―――廉の愛情には勝てないと思った。
***
どうしよう…
とにかくあの場所から逃げ出したくて
勢いで飛び出してきたけど、
行き先があったわけじゃなかったオレは
エレベーターの中で途方に暮れる。
一応、釘を差したとはいえ、
もしかしたら紫耀が来るかもしれないから
家にも帰りづらいし、
どうしよう、、
昼間の寒さは和らいできたとはいえ、
まだまだ夜はグッと冷え込む街を
トボトボと歩きながら思い悩む。
……あぁ、そうだ。
廉が教えてくれたバーがこっから近いんだった。
そう思い立って、その場所を目指す。
タクシーを拾おうかなって一瞬、思ったけど…
思考を整理したかったオレは歩いていくことにした。
夜の散歩は…好き。
凛とした空気を吸い込みながら踏みしめると
頭の中が澄んでいく気がするから。
さっきの出来事を思い出しながら
たくさん…考えた。
紫耀のこと、
廉のこと、、
今までのこと、
これからのこと、、
落ち着いたライトアップの看板のドアを開けると
見慣れたマスターが落ち着いた声で
「…こんばんは」と出迎えてくれたから
なんだかすっごく…ホッとして。
壁際のお気に入りのカウンター席が空いてたから
指を差して「…いいですか?」と訊くと、にっこりと
微笑んだマスターからおしぼりを配膳される。
バーチェアを引いて座ろうとしたそのとき、
「…海人じゃん」と、席を1つ空けた席に
座っていた優しい声の男の人から声をかけられる。
「こ…こんばんは?」と、
恐る恐る声の主を確認すると…増田くんだった。
「そんなビビんないでよ…w」
グラスを傾けながら微笑みを浮かべる増田くんは
TV収録で見かける増田くんとは違って
色っぽくて…ドキッとした。
「…海人、ひとりでバーとか来るんだ?」
「そう…ですね、ときどき。
僕ももう、25の男なので」
「海人も25か〜、俺も年取るわけだわ!笑
……何呑む?奢るよ」
「あっいや…」甘えん坊だとよく言われる
オレだけど、酒の席での先輩への甘え方は
苦手で…戸惑う。
逆に、廉は得意なんだよな、こういうの…。
そんなふうに廉がいないのに勝手に廉を感じては
恋しく思ったりして…。