第20章 【囚愛の果て】
「…とりあえず、降りてくれん?
最低野郎さん」
冷静さを取り戻した始めたらしい紫耀は
無言で俺を解放してソファの座面を背もたれに
床にへたりこんだ。
「あんさ…俺も子どもやないから、いろいろと
2人にしかわからんことあんのは…わかるし。
紫耀が海人のことを大切に思っとる気持ちも
嘘やないと思うし、わかっとるつもり。」
あんなん見せられて怒ってるかと思ったけど
そう話し出した廉の声色は…穏やかだった。
「まぁ…紫耀はわかられてたまるか!って思うんやろ
うけどな 笑 どーせ。」と困ったようにつけ加えて。
「あと、紫耀は敵対視しとるみたいやけど…
俺は敵やないよ?むしろ、味方かもしらん。
海人のこと好きなもん同士の同志。同志たるもの
海人には幸せでおってほしいやん…?」
廉が言ってることは…わかる。
海人に幸せでいてほしい気持ちは俺も同じで。
だけど、俺と廉の違いは―――…
「やから、海人のこと大事にできる余裕が
いまはまだ紫耀にないんやったら…
海人のこと手放すのも愛情なんやないん?」
「別に…一旦手放したからって一生手放さんといかん
ってこともなくて。紫耀がさ、海人のこと大事に
できるって自信持てたら迎えに来たったらいいやん」
「心配やったらそのときがくるまでは紫耀のかわり
に変な虫つかんよう俺が守ったってもいいし。」
「それは……込みで?」
「まぁ…そっちのが海人のメンタルが
安定するんなら、込みで。」
俺と廉の愛情表現は…違う。
そのうえで、廉は自ら海人にとって
都合のいい役を引き受けると言っていて。
「……お前は、それでいいわけ?」
「いいも何も…俺は、
海人が笑ってくれとったらそれでいいんよ。
仮に、、海人の心の中に誰か棲んどってもな。」
慈しむように穏やかな微笑みを浮かべる廉。
俺は、海人の心の全部を欲しいと思っていたし
海人は俺のモンだってことを宣言したくて
廉のことを待ち伏せたけど、、
俺が廉みたいな愛し方をできたら…
海人は今も俺の隣で、笑ってたのかな。
「ただ―――」
そんなことをぼんやりと思っていたら
鋭い眼光の廉が俺を射ぬいた。
「海人の笑顔を奪うやつのことは許せん。
たとえそれが、、紫耀やったとしても、な。」