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【KP】BL

第22章 【ウォッカギブソン】






「れんっ!」
腕を掴まれて
仄暗いバーの灯りに照らされた廉の顔は
無理して笑ってるようで―――…


泣くのを必死に我慢してるような廉から
目を逸らせなかった。


「えっ…」

「…ちゃうっ!これは…違うから、!
何でも!何でも、ないから…」

「そんな顔して何でもないって…、
何でもなくないじゃん!!」

「ほんまに何でもないんやって!
ちょっと酔っ払っただけやから…っ!」

「嘘ばっか!廉と何回呑んできたと思ってんの?
廉がこれくらいのお酒で酔うわけないじゃん!」

「……お願いやから。
酒のせいに、させてや…」


掴んでたオレの腕を振り解いて
力なく笑う廉を
追いかけるのは違う気がして…


そのままバーチェアに崩れ落ちたオレは
ぐるぐると渦巻く思考を振り払うように首を振る。


「……何か、お作りしましょうか?」

「じゃあ…おまかせで」

「かしこまりました。」


バーテンさんがお酒を作ってくれる様子を
ぼんやりと眺めながら廉との記憶を必死に辿る。


廉は…オレが思うより好きだったのかな、
オレのこと…。


……いつから?


いつからオレは…廉のことを
無邪気に傷つけてきたんだろう…。


「…どうぞ。」


スマートに差し出されたカクテルは
氷のように透明で。


いつもバーでは鮮やかなカクテルを頼むことが多い
オレは多分、はじめましてのカクテル。


ひと口、口に含むと
強めのアルコールと辛めの飲み口に頭が冴える。


「…沁みます。」

「それでしたら…よかったです。」

「このお酒は…何ていうお酒ですか?」

「ウォッカ・ギブソンです。」

「ウォッカ・ギブソン…」


ちなみに、意味って…
そう訊きかけて、やめにした。


なんとなく、廉以外の口から
その言葉を聞いちゃいけない気がして。




***




今日はダンスレッスンの日で
あの夜ぶりに海人と会う。


振付師さんが来る前に
確認したいところがあるって海人から言われて、
レッスンが始まる30分前に着いた俺。


普段どうり、普段どうり…
そう自分に言い聞かせてスタジオに入る。


「……うっす」

「あっ廉!おはよー!」


よかった、いつもどおりや。
今までどおりの俺らでこれからもおれる…


そう安堵した次の瞬間―――










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