第22章 【ウォッカギブソン】
「れぇん、聞いて?!」
「今度はどうしたん苦笑」
「なんか、またわがまま言い出してさぁ…」
俺の好きな人にはカノジョがおる。
しかも、俺が知る限り…結構、絶え間なく。
「この仕事してるって知ってて付き合い始めたのに
ディズニー行きたいだの、一緒に行けないなら
別の男と出かけるだの、別れるだの、3年以内に
結婚できる人と付き合いたいだの…どう思う?!」
「それは、、困ったちゃんやなぁ…苦笑」
「だよねぇ?苦笑 もう、潮時かなぁ…」
「海人は…どうしたいん?別れたいん?
それともその子のコト、まだ好きなん?」
「好きだけど…でも、そんなん言われたら
何も言えないよね、こっちはさ…。
実際、いろんなこと我慢させてるし…」
そんなことを零しながらあからさまに肩を落とす海人。
「しゃーないなぁ!今日はパーッと、行くか?」
さっき落とされたばかりの海人の肩を
バシッと叩いて、明るく誘う。
「えっい、いいの?!
廉、最近忙しそうだったのに…」
「いいにきまっとるやん笑 海人が落ち込んだときの
話も聞けんなんて、仕事のパートナーとしても
友だちとしても失格やろ笑」
「れぇん!!」
俺の気持ちも知らんと
ひしっと抱きついてくる、俺の好きな人…。
***
「やっぱ、女の子って…わかんないわー!
付き合い始めの頃はそれでもいいって、
そう言ってたんだよ?!なのにさぁ!!」
「そうは言うても
欲が出てくるんが人間やからなぁ苦笑
けど欲が出るっちゅうことは好きなんやろ。
海人のこと。」
「そうかなぁ…あっねぇ、廉は?
廉はないの?俺に。欲…」
ごはん屋さんで腹ごしらえを済ませた後訪れた
行きつけのバーカウンターで
グラスをゆらゆらと揺らしながらへにゃっと笑う。
「この…酔っ払い苦笑」
「えへへ、酔っぱらっちゃったかもー!笑」
俺の肩に頭を預けながら海人が甘える。
いま、俺が…海人に触れれば
想いが伝わってしまうんやろうか…?
そんなん思っとたら指先に全神経が
集まっとるんやないかっていうくらい
緊張が高まってきて。指をわずかに動かす
だけでもピキピキと音が聞こえてきそう――。
「あ!でも、そーいや…廉が恋愛で悩んでるとこ、
見たことない気がする!
まぁ…廉は、いろいろ…上手くやりそうだけど!笑」