第20章 【囚愛の果て】
狂いかけてることにお互いが気付いてるのに
そこから抜けだす方法がわからなくて。
まるで…蟻地獄。
でも、別に…
乱暴に抱かれることには慣れっこだったし
オレだけが傷つくならそれでもよかった。
いくらだって、我慢できた。
だけど、その日、、廉を侵されたことが
オレには赦せなかったんだ―――
***
どんな夜を過ごしても
翌朝には、いつも穏やかな海人に戻ってるのに…
次の日、俺が目を覚ますと海人は既にいなくて。
海人の方が先に出るときは必ず、可愛いイラストが
添えられた置き手紙をしてくれてたのに
それすら…なくて。
かわりに残されてたのは
“話があるから、今夜時間を作ってほしいです”
とスマホに届いた無機質なメッセージだけだった。
こんなときの話ほど嫌なものはないよな…と
溜息をつきつつ返信する。
“今日は確実に、25時越えるよ”
“でも、話さなきゃだから…待ってる”
***
その日、昼間マネージャーに買いに行かせた
海人の好きなデザートを手に帰宅すると
テーブルでイラストを描きながら待っていた海人。
だけど、俺が声をかけるとサッとそれを隠して
「……それ、次の仕事の?」
「あっ…うん、」
そう言われればそれ以上踏み込むことはできなくて…
グループが別れた俺たちは
いつしか言えないことの方が多くなっていた。
「おかえりなさい。遅くまでお疲れ様。
あ、あのね、話っていうのは…」
「待って。先に風呂くらい入らせて。
あとこれ…冷蔵庫入れといて」
「あっ…うん、そうだよね、ごめんね」
覚悟を決めて帰宅したつもりだったのに
いざ海人の顔を見ると、怖くて…
シャワーの時間なんてたかが知れてんのに
そのわずかな時間でいいから先延ばしにしたい
だなんてだせぇ自分に呆れる。
だけど、いつまでも引き延ばすわけにもいかないと
覚悟を決めてシャワーから上がると
待ちわびていた海人が話し出した。
「オレ…今さ、言葉じゃ上手く言えないんだけど
廉からすっごい安心をもらえてて…
廉と一緒にいる時間が楽しいんだよね。」