第16章 【いつの日のキミも】
「あっ、あの!…ここ、すごく高そうっていうか、
僕にはもったいないっていうか、、
こんなハイブランド、僕なんか着こなせない
と思うので、別のとこでお願いします!!」
なんて懇願される。
「大丈夫に決まっとるやん!いまの服も似合てるし。
かいくん顔もキレイやし、スタイルもええんやから
もっと自信持ち?」
「や…あ、でもほんと大丈夫です!
僕、安い服でもそれなりに見えるんで!!」
おもろ笑
海人って…そういうとこ、あるよな笑
「んー…あー…けどさ、こんなん自分で言うのも
どうかと思うけど俺、一応…顔差してんのよ苦笑
やから、あんまどこでもここでもは行きづらくて…
俺のためと思って、ここで買い物してくれん?」
ここに行き着くまでもチラチラと送られる視線に
海人も思うところがあったようで
そういうことなら…と渋々受け入れる。
*
「こっ倖生さん…っ!値段ヤバいです!!
僕が普段買ってるやつの20倍くらいします!!」
暫くすると試着室からひょこっと青ざめた顔を出して
小声で訴えてくる海人。
10年後は海人も自分で買おてんのに
そんな可愛いことを真剣な顔で言うてくんのが
たまらんくて笑
「気にせんでええって!ええやつは長く着れるし!
で、いま着とるん?」
「いっ…一応…」
「見して?」
ひょこっと顔出しとった扉をぐぃーっと開けて
全身を確認する。
「えっ、と…こんな、感じ…です」
「おお!似合てるやん!!気に入った?」
「はい!あっでも…!」
「よっしゃ、気に入ったんなら決まりな!」
倖生さんはためらいもなく店員さんを呼んで、
流されるままに買ってもらったばかりの洋服で
店を後にする。
こんなに高いものをポンッと買ってくれるなんて
本当に大丈夫なんだろうか…
めっちゃ、優しい顔した悪魔ってこと、ない…?
なんて少しだけ、疑いの眼差しを向けちゃったけど
「このあとどうしよ?
かいくんはまだ呑まれんしなぁ…苦笑
ブラっとするかぁ!」
そう誘ってくれる倖生さんのことを
一瞬でも疑ったことが申し訳なくなるくらい
そのあともずっと、
ひたすらに倖生さんは優しかった。