第12章 【水曜日はキミ曜日〜before&after story〜】
「えっ…?」
「忘れたことなんかないわ!」
「えっ?!」
「あーもう、このニブちん!!
俺のなの!その消しゴム!!」
「いっ?!」
「やから…その消しゴムあげたん、俺!!」
「えっいーー?!そうだったの!?」
俺がそのときの消しゴムのキミなんて、
微塵も思いもよらんかった!みたいに
髙橋くんが大げさに驚く。
「そうよ?笑 ちなみにやけど、俺らその後の
面接グループも一緒やったからな?」
「えっ!?!そ、そうだったんだ…面接こそ
余裕なかったから全然覚えてなくて、ごめん…
でもっあ!あのときは、ありがとう!」
「……いま?笑」
「うん!!せっかく親切にしてもらったのに、
テンパってお礼もちゃんと言えなかったから
ずっと、気になってて…。
でも、この消しゴム持ってたら
いつかは会えるんじゃないかなって。
そう、思ってて…願かけっていうか…」
「じゃあ、、叶ったやん。会えたやん。
なんなら…結構、すぐに会えとったけどな?笑」
「蓋を開けてみればね笑 けど、恥ずかしいな…
なんか、パシられてるとこ、見られてたなんて、。」
俯きながら作り笑いをする髙橋くん…。
「別に…髙橋くんが恥ずかしがること1個もないし。
アイツらこそ、恥ずいやん。」
「ふふっ……ありがと。それと、ありがとう。」
「最後のありがとうは何に対してのやつなん?笑」
「僕…永瀬くんに『髙橋くん』って呼ばれるの
嬉しくて。それまではね、あのひとたちに乱暴に
『タカハシ!』って呼ばれてる印象が強くてなかなか
好きになれなかったんだ、自分の苗字。
けど…ね?永瀬くんが…優しく呼んでくれるから
いまは結構…好き、だよ。
それに対してのありがとう、です…。」
そう、恥ずかしそうに零す髙橋くんのこと、
愛おしいと思っちゃうのは困らせるかもしらんし
キミにとっては迷惑なのかもわからん。
けど、もう、、
無理やった。
自分で自分の気持ち抑えんのは
限界のところまできとって…。
「あほやなぁ…」
弾けるように想いが溢れた俺は
その想いのままにきつく、
髙橋くんを抱きしめる。
「そんなん、なんぼでも呼んだる…。」
「ありがとう」と呟いた髙橋くんは戸惑いながら
俺の背中に腕を回して
震える指で抱きしめ返してくれた。